「古文」自分に聞かせる音読

更新情報

2019年センター試験 古文の「玉水物語」を音読しました。4段落ある内の第1段目を動画化しました。
  玉水物語 音読動画へ
併せて、「玉水物語」の音読台本を公開します。
下記をクリックするとダウンロード出来ます。PDFで8ページです。

今の「古文学習法」すこし変?

古文を見ると、反射的に「品詞分解」を始めてしまう。
古語は英単語のように丸暗記しようとする。
また、和歌を見れば、どこに「修辞」があるか探してしまう。

これでは、いつになっても「本文」を読めるようにならないし、和歌も分からない。
これは、ひとえに現在の古文学習が「試験」「受験」のためになっているからでしょう。だから、受験が終われば、その後の人生で「古文=日本古典文学」に再会する人は多くない。残念である。

古文に出会う学生時代に、たとえ受験のための学習であろうとも、本文をきちんと読み、その面白さ、奥深さが体感できる学習法はないだろうか?

古文は「本文をきちんと読む」ことから始めよう。

少し考えれば分かることですが、文法も単語も、全て「本文」の中にあります。
始めに「本文」があって、単語も文法もその中にあるのだから、「本文」をきちんと読めればいいのです。
でも、「本文が読めない」から、単語を覚えたり、文法を学習するのではないの?
当然わき起こる疑問です。
でもこの疑問、古文を英語などの外国語と同じ土俵で考えていませんか?

古文は日本語です。 時代を経て変化はしていますが、文の骨格、つまり文法は多く現代文に引き継がれています。単語も、やはり変遷を経ながらも、多くが現代語に引き継がれています。私たちは、すでに日本語文法を身につけており、単語も多くは前後の文脈から推察出来るのです。だから、私たちは、古文は読める声を出して読めるということを自覚することが大切です。

古文の学習は、「本文をきちんと読む」ことから始めましょう。
意味や解釈は後でいいのです。それらは本文の中にあるのですから。とにかく、意味がよく分からなくても、一定量の本文を声に出して読み、「なんとなく分かる」「分からない」を体感することです。

「なんとなく分かる」「分からない」を『分かった』にするためには、「何が分からないのか」のか、その実態を知ることです。安易に「単語」や「文法」のせいにしないこと。今の自分の「日本語の力」で推察、想像してみてください。頭で考えるだけでなく、分からないところを「声」にだし、「耳」で聞いて推察、想像するのです。頼りになるのは「文字」と「音」です。文字のつながり(語や句)をよく見て、いろいろな音調で音読してください。何か感じることがありませんか。それからです。辞書や文法書で確認するのは。

古文には、時代的な隔たりにより、現代日本語では推察出来ない単語や言い回しがたくさんあります。それらは辞書や文法書で調べなければなりません。でも、本文を離れた単語や文法書の「棒暗記」はお勧めできません。
「本文の読みを通して身につけた知識」は、応用力もつき、古文を超えて他の科目でも役立つものとなります。本文を通しての知識獲得を優先させましょう。

「古文」の学習は、「日本語」の学習なのです。そして日本語の力は、全ての学科(学問)の土台です。全ての学問は、言語を通して学ぶのですから。

古文は「音読」しよう。

文章を「声に出して読める」こと、この事実は大切です。外国語の学習では、音から勉強しなければならないのですから。

文章の読みには「黙読」と「音読」があります。
「黙読」は目で文字を追う読みで、「音読」は目で文字を追いながら声にする読みです。そして、音読には、さらにその先があります。
「自分の声を自分の耳で聴く」ことが出来ることです。
一般的に、音読は発声(口)に注意がいっていて、自分の耳で聞くことは当然のこととしてあまり重視されません。でも、自分の声をしっかり聞くようにすると、発声が変わってきます。それに伴って、文章を見る意識も変わってきます。文をしっかり見るようになります。
「音読」は、文章をしっかり見て、発声を整え、自分の耳に届けるようにします。

※「朗読」は、<他者に向けての音読>です。そのためには、声や感情表現などの訓練が必要です。ここで言う「音読」は、今の自分の声で、文字を、単語を、句を、文を音にして、「声で解釈」しようとする試みです。

自分自身へ、自覚的に「読み-聞かせ」をしよう。

音読は、他人に向けてするものではありません。
音読は、文章を「解釈するため<自分に向けて>行う」ものです。
ですから、「きれいな声でなめらかに」する必要はありません。
詰まりながらでも、行きつ戻りしつしながら、声を工夫して、文の意味を探りながら、自分の耳に、脳に、心に届けように音読します。

1回だけでなく、何回か繰り返すと文の意味が分かってきて、それに伴って音読もスムーズに行くようになります。この循環を「自分に聞かせる音読」と呼びます。
誰でもやっている音読を、より自覚的に行おうという提案です。

「自分に向けての読み-聞かせ」の実行。

「更級日記」の「音声教材」を動画化したものです。画面をクリックして聞いてみてください。


上のビデオでは、音声は一方的に流れていきますが、実際の「音読教材」では、停止させたい所をクリック(タップ)して「停止」させ、わかりにくい所は、その箇所を何度でも「停止/再生」することが出来ます。
また、「音読教材」には、音読しやすいように、独自に記号付けされた「音読台本(pdf)」が別途ダウンロード出来ますから、それを見ながら音読をすれば、古文本文の理解を深めることが出来るでしょう。

「古文は音読が大切」とよく言われます。
でも、「音読」は誰でもできるという前提で、その「やり方」や「参考となる音読」は多くは示されません。声に出して読めるから音読が出来るという訳ではありません。
学校では、先生の音読を聞き、それを繰り返す授業をしているのでしょうが、音読はやはり「一人で、主体的に」行うものです。
また、古文を朗読したCD等も発売されていますが、それらは主に鑑賞を目的としたものです。
上のビデオのように、「文字」と「声」が一体となった「音読」は、視覚と聴覚を同時に働かせながら文を読み、また、それをリピートすることで、古文への抵抗感を薄め、身体的、主体的な「読み」と「学習」が出来るようになります。

音読の工夫

音読するときに気をつけることは、声を「止める箇所」と「間(止めている時間)」です。文の「区切り」をどこに置くかで、解釈が違ってしまうことがあります。
句読点が一応の目印になりますが、古文においては参考程度にして、句読点は自分で付けたほうがよいでしょう。
古典の「原文(写本)」には、もともと句読点は付けられていません。原文を校訂(こうてい)翻刻(ほんこく)、また現代語訳した学者が、自身の解釈で付けたもので、尊重すべきですが、音読するには、読点(、)が少なすぎます。
それと、日本語は「分かち書き」をしませんから、単語の境目が明確でありません。漢字を用いることで、体言(名詞)や用言(動詞、形容詞)の区別が出来るようにしていますが、これも古典(かな)文学では、多くは現代の読者用に後から施されたものです。それでも、用言の後ろに連接する複数の助動詞や助詞は、区別が難しく、音読を惑わせる原因となります。

古文の音読には、一般的に教科書や市販本の本文とは別に「表記」を工夫した音読用「台本」が必要です。音読の際に気をつけるべき「止め」と「間」、そして連続する語の識別のために、視覚的に分かる記号付けされたテキストが必要です。

上のビデオでは、主に音読での意味の区切りを重視して、「語句のまとまり」を色付けしています。文法的な語の区切りは、視覚的に分かるよう「音読台本」に施しています。それにより、視覚と聴覚を同時に働かせて、より意識的に語句や文の認知と理解を深めることが出来るでしょう。

本文をきちんと音読で読めるようになれば、「文法」と「古語」も本文を通して、文脈に即した「意味と機能」の習得につながり、実践的で効果的な学習をすることが出来るようになります。

「電子教材の規格」と「閲覧アプリ」の紹介

上のような考えで、電子図書形式の「音声教材」を作ってみました。
「EPUB3 MediaOverlays」の規格で作りました。
iPhoneやiPad、Android等のモバイル端末と、パソコンで再生できます。

その規格と、教材を再生するアプリについては、下記ボタンのクリック先で説明します。

塾や学校の先生方へ (音声付きデジタル教材の制作代行)

教室にiPadを導入されているのでしたら、当方の音声教材の採用をご検討ください。
ここでは、古文だけを扱っていますが、使われている技術(EPUB3 MediaOverlays)は、他の教科にも使えます。読書が苦手な生徒や視覚障害を持つ生徒には特に有用です。当方の教材は、「マルチメディアDAISY図書」と同等の規格で作られています。もし、このような音声教材を作ってみたいというご希望があれば、[原稿」と「音声」をご用意いただければ、制作代行をいたします。
ご要望、ご質問等ありましたら、フッターの「古文音読堂への連絡」よりお知らせください。

「デイジー図書」については、下記をご参照ください。
マルチメディアDAISY図書
視覚障害やその他の障害で、図書が自由に読めない人たちの為に、「情報へのアクセシビリティ」に配慮した国際規格です。
DAISY:「Digital Accessible Information SYstem」(アクセシブルな情報システム)詳しくは、下記をご覧ください。
 アクセシブルな情報システム"DAISY"に関する取り組み
 マルチメディアDAISY図書