古文の読み方(3)
文は、単語(語)で構成されます。単語を並べて、ある内容を持った文を作ります。その単語にはいくつかの種類があります。
ここでは、単語を大きく「もの」「こと」「さま」の3つの分けてみます。
雀の子を犬君が逃がしつる。
「もの」を表す単語:雀、子、
「こと」を表す単語:逃がす
髪ゆるるかにいと長く、めやすき人なめり。
「さま」を表す単語:ゆるるかなり、ながし、めやすし
「もの」を表す単語:髪、人
文法用語では、「もの」を名詞、「こと」を動詞、「さま」を形容詞と呼びます。
日本語の「文の形」は、文末の語の種類によって以下の3種類に分かられます。
もの + こと → 花、咲きぬ。 動詞文 もの + さま → 花、美し。 形容詞文 もの/こと + もの → 花は、桜なり。 名詞文
古典の文章は我々の先祖が使っていた「
「文字」(視覚)と「音」(発声と聴覚)をうまく工夫して、自分なりの理解につなげる古文読みが出来るはずです。ここでは、ひとつのアイデアとして厳格な辞書的「意味」を求めるのでなく、語や句、文が発する「様相」を感じ取る試みをしてみたいと思います。
「ことばが発するイメージ」をここでは「様相」と呼びます。
「僧侶」という単語を見て、もしくは音で聞いて、思い浮かべるイメージは人それぞれ異なります。辞書で意味を調べても、まったく同じ意味を共有することはありません。
「虫(む・し)」という音を聞いて、気持ち悪く感じる人と、興味がわき起こる人がいるように、「ことばが発するイメージ」は人それぞれで異なります。
現代語においても、「ことばが発するイメージ」は人それぞれで異なるのですから、古文においては、その差はさらに大きくなります。「古文は現代語に翻訳できない」という極端な意見もあります。
でも、私たちは、古文の「ことばが発するイメージ」をひとり一人の感性で受け取ることは出来ます。それは、時代を超えて連綿と繋がる日本人の感性や心ゆえかもしれません。
この「ことばが発するイメージ ⇒ 様相」から、古文の語や句、文を捉えていくやりかたが、「古文の読み」にはかなっていると思います。それには、やはり「音読」によって「声」を自分の耳に届ける「訓練」をすることです。他人の音読を聞くことも大切です。
古文は「文字」として現代に伝わりましたが、その後ろには作者の「声」が、また各時代に於いて古典を愛してきた多くの人の声が潜んでいます。古文は「声の伝承」でもあるのです。
様相は、語、句、文から湧き上がるイメージですが、より大きな観点から、下記のようなとらえ方をしてみるのも、文章の解釈に有効かと思います。
場所の様相
季節や時間の様相
人物の様相
動作、出来事の様相
情景の様相
心情の様相
別の角度から「助動詞の様相」をまとめてみました。暫定版です。
今日は、ここまでにします。
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